
ゲーム理論という言葉を聞いたことはあっても、「具体的にどのような考え方なのかわからない」「ビジネスやマーケティングでどう活用されているの?」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ゲーム理論の基本的な意味や代表例、大切な考え方に加えて、マーケティングでの活用方法までわかりやすく解説します。ゲーム理論をマーケティングや日常の意思決定に活かしたい方は、ぜひ参考にしてください。
ゲーム理論とは

ゲーム理論とは、複数の意思決定者(プレイヤー)が互いに影響を及ぼし合いながら意思決定を行う状況を分析する理論です。
「ゲーム」と名付けられた理由は、相手の意思決定が自分の意思決定に影響を及ぼすという構造が、チェスや囲碁といった対戦型ゲームに似ているためとされています。
このゲーム理論は、競争や協力が発生する状況において、相手の行動を考慮した意思決定を分析できることから、企業経営やマーケティング分野でも活用されています。
ゲーム理論が適用される主な分野は、経済学・経営学・政治学・社会学など多岐にわたります。ビジネスの文脈では、競合他社の価格戦略の予測、入札や交渉の設計、広告出稿量の最適化などに応用されており、「相手の出方を読んで最善手を選ぶ」という考え方が共通して活かされています。
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ゲーム理論のはじまり
ゲーム理論はどのように生まれ、発展してきたのでしょうか。その起源をたどると、20世紀中頃の数学・経済学の交差点にたどり着きます。
1944年にフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンが執筆した「ゲーム理論と経済構造」の出版によって世界的にゲーム理論が広まりました。
その後の1950年にナッシュ均衡が定式化されたことでゲーム理論の分析が、標準的な均衡概念として確立されたと言われています。
ゲーム理論の代表例

ゲーム理論には、相手の行動を踏まえて意思決定を行う状況を理解するための代表的なモデルがあります。ここでは、ゲーム理論を学ぶうえでよく用いられる「囚人のジレンマ」「チキンゲーム」「ゼロサムゲーム」を紹介します。
囚人のジレンマ
「囚人のジレンマ」はゲーム理論ではとても代表的なモデル例として取り上げられています。ここで、以下の状況を考えてみてください。
犯罪を犯した容疑者が2名います。(ここではA容疑者とB容疑者としましょう。)
各々別室で尋問を受けることになりました。二人の容疑者に与えられた選択肢は「自白する」または、「自白しない」の2択です。
そして、自白の状況によって彼らが受ける罪の重さが変わってくることになります。

- A容疑者:自白する B容疑者:自白しない → A容疑者:無罪 B容疑者:懲役10年
- A容疑者:自白しない B容疑者:自白する → A容疑者:懲役10年 B容疑者:無罪
- A容疑者:自白しない B容疑者:自白しない → A容疑者:懲役2年 B容疑者:懲役2年
- A容疑者:自白する B容疑者:自白する → A容疑者:懲役5年 B容疑者:懲役5年
上記のように、懲役の長さが変わったり、無罪になる可能性があったりる場合、各容疑者はどのような行動を選ぶのでしょうか。
このような状況では、一番魅力的に思えるのは「自分だけが自白し、相手が自白しない」というケースです。この場合、自分は無罪になり、相手だけが重い懲役を受けることになります。しかし、もし相手も自白した場合、両者が懲役5年になるリスクがあります。
一方で、お互いに「自白をしない」という選択をした場合、懲役は2年ずつとなり、最も軽い結果となります。
容疑者AとBが互いの利益を考慮した場合、「自白をしない」を選び、懲役を最小限に抑えることが理想的に思えます。しかし、現実には「自分だけが利益を得たい」と考えると、自分だけが自白する選択肢を取る可能性が高まります。その結果、「お互いが自白しない」場合よりも懲役が3年長くなるケースが生じるのです。
このように、お互いが自分にとって最適な選択をしたにもかかわらず、協力した場合よりも悪い結果になる状況を「囚人のジレンマ」と呼びます。この囚人のジレンマを理解するためには、「パレート最適」と「ナッシュ均衡」の概念を知っておくことが重要です。
チキンゲーム
チキンゲームとは、お互いが強気な行動を取り続けることで、最悪の結果を招く可能性がある状況を表したゲーム理論のモデルです。
名前の由来は、2台の車が向かい合って走り、どちらが先に進路を変えるかを競うゲームにあります。先に避けた側は「臆病者(チキン)」と見なされますが、両者とも避けなかった場合は正面衝突し、大きな損失が発生します。
このゲームの特徴は、「相手が譲るなら自分は強気でいたい」「しかし相手も同じ考えなら大きなリスクが生じる」という点です。そのため、相手の行動を予測しながら判断する必要があり、ゲーム理論では駆け引きを考える代表的な例として用いられています。
ビジネスにおける典型例としては、2社が同じ市場でシェア拡大のために赤字覚悟の値下げ合戦を続けるケースが挙げられます。どちらも撤退すれば損失が確定するため強気を維持しますが、両社が継続すれば市場全体の収益性が悪化するという、まさにチキンゲームの構造が成立しています。
ゼロサムゲームと非ゼロサムゲーム
ゼロサムゲームとは、参加者全体の利益と損失の合計がゼロになる状況を指します。誰かが利益を得ると、その分誰かが同じだけ損失を受ける関係です。将棋やチェス、ポーカーなどは代表的な例で、勝者の利益は敗者の損失によって成り立っています。
一方、非ゼロサムゲームとは、参加者全体の利益と損失の合計がゼロにならない状況を指します。誰かが利益を得ても、他の誰かが損をするとは限らず、参加者全員が利益を得たり、反対に全員が不利益を受けたりする場合もあります。
現実社会では、勝者と敗者が明確に分かれるケースだけでなく、協力によって利益が拡大する場面も多く存在します。そのためゲーム理論では、ゼロサムゲームだけでなく非ゼロサムゲームも重要な考え方として扱われています。
ビジネスの例では、市場シェアをめぐる競合との争いはゼロサムゲームに近い一方、業界団体が共同でロビー活動や規格策定を行う場面は非ゼロサムゲームに該当します。マーケティング戦略を考える際も、競合との関係が「奪い合い」なのか「共存拡大」なのかを見極めることが重要です。
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ゲーム理論で重要な考え方

ゲーム理論では、相手の行動を予測しながら意思決定を行います。その中でも、「ナッシュ均衡」と「パレート最適」はゲーム理論を理解するうえで重要な考え方です。これらは、複数の選択肢の中から「個人にとって合理的な状態」と「全体にとって望ましい状態」を考える際に使われます。ここでは、それぞれの意味と違いを前項で紹介した「囚人のジレンマ」を参考に解説します。
パレート最適とは?

パレート最適は、お互いの不利益な状況を避け、全体の利益が最大化されている状態のことを言います。簡単に言うと、『誰かの利益を損なわない限り、他の誰の利益も高めることができない状態』を指します。つまり、資源が無駄なく配分されている状態のことです。
囚人のジレンマでは、「お互いが自白をしないで、懲役2年ずつになる状態」が、双方にとって比較的良い結果となります。そのため、「お互いが自白して懲役5年ずつになる状態」と比べると、より望ましい状態だと考えられます。
ただし、実際には「自分だけは自白して得をしたい」と考える可能性があるため、全体にとって望ましい結果と、個人にとって合理的な選択が一致しない点が、囚人のジレンマの特徴です。
ナッシュ均衡とは?

一方で、ナッシュ均衡は、各プレイヤーが互いに最適な戦略を選択しており、もはや自分一人だけが戦略を変えてもメリットが得られない安定した状態(つまり、均衡)である組み合わせのことを言います。
先ほどの、パレート最適では、お互いが自白をしない状況が最適でしたが、もしも、相手が裏切って自白をした場合は懲役10年を受けることになり、「相手がどちらを選んでも、自分は自白した方が得になる」という支配戦略が存在します。
支配戦略とは、相手の行動に関係なく、自分にとって最も有利になる選択肢のことです。その結果、双方が合理的に判断すると、お互いに自白を選ぶナッシュ均衡が成立します。
パレート最適とナッシュ均衡で考える囚人ジレンマ
囚人のジレンマでは、「お互いが自白しない」状態は、2人とも軽い刑で済むため全体にとって望ましい結果です。そのため、この状態はパレート最適と考えられます。
一方で、「相手がどう動いても、自分だけは自白した方が有利」と考えると、双方が自白を選択する可能性が高くなります。この状態では、自分だけ行動を変えても結果が改善しないため、ナッシュ均衡が成立しています。
つまり、囚人のジレンマでは「個人にとって合理的な選択」と「全体にとって望ましい選択」が一致しません。ゲーム理論では、このようなズレを分析することも重要な考え方のひとつです。
ゲーム理論はマーケティングでどのように活かされるの?

価格競争
企業が同じ市場で商品やサービスを提供している場合、価格設定は競合他社の動きに大きく影響されます。たとえば、一方の企業が値下げを行うと、競合も顧客獲得のために追随する可能性があります。
その結果、双方が価格を下げ続け、最終的に利益が減少してしまうケースもあります。価格競争では、自社だけでなく競合の行動も考慮して意思決定を行う必要があるため、ゲーム理論の考え方が活用されています。
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広告出稿競争
競合が広告費を増やした場合、自社も露出を維持するために広告戦略の見直しが必要になることがあります。一方で、過度な広告競争はコスト増加につながる可能性もあります。広告出稿では、相手企業の行動を予測しながら最適な施策を考えることが重要です。
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フリマ・オークション
フリマアプリやオークションでは、出品者や購入者がお互いの行動を予測しながら価格を決定しています。購入希望者は「他にも入札者がいるのか」、出品者は「どの価格なら売れるのか」を考えながら行動します。このように、相手の行動によって自分の判断が変わる状況は、ゲーム理論の代表的な考え方のひとつです。
SNS
SNSでは、自社の発信だけでなく、競合企業やユーザーの反応も考慮しながら運用を行う必要があります。どのタイミングで投稿するか、どのような内容を発信するかによって成果は大きく変わります。また、競合の施策や市場の動きによって戦略を調整するケースも少なくありません。SNS運用でも、相手の行動を前提とした意思決定が求められます。
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口コミ戦略
商品やサービスの評価は、ユーザーの口コミやレビューによって大きく左右されるでしょう。良い口コミが増えることで利用者が増えるケースもあれば、反対にネガティブな評価が広がることで購買行動に影響を与える場合もあります。
企業は消費者の反応や競合状況を踏まえながら施策を検討するため、口コミ戦略にもゲーム理論の考え方が活かされています。
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実際にあるゲーム理論の活用例を紹介!

ここから、ゲーム理論を取り入れた実例を紹介していきます。
①大手携帯電話会社の例
ここでは、大手携帯電話各社が提供しているサービスの料金体系が同金額な理由をゲーム理論と交えて考えてみます。
国内の大手携帯会社と言えば、SoftBank、au、docomoが挙げられます。
この3社とも携帯料金の月額料金が8,000円だと考えましょう。こういった状況の際に、auが月額料金を7,000円に引き下げたとします。
すると、SoftBankもdocomoの利用者が料金の安いauに乗り換えるのは明白だと思います。
その結果、auが市場を独占する状態になる可能性があります。その状況を、考えた(ゲーム理論:自分の利益を最大化するために、相手の行動に応じて、自らの行動が変更すること)SoftBankもdocomoも月額料金を7,000円に下げます。
こうして、自社の利用者が他社へ乗り換えることを防ぎます。
しかし、1社が市場を独占したいが為に、価格を下げていくと携帯会社が得る1人あたりの利益がどんどん下がって行く状況になります。
企業側としても利益が下がることも避けたいため、他社の行動を考え、合理的に考えた結果どの会社も携帯料金を下げることをしなくなるのです。
②プラスチック製のゴミ問題の例
環境問題への対応も、ゲーム理論で考えられるケースのひとつです。
プラスチックごみ削減の取り組みは、社会全体にとって望ましい行動ですが、企業側にはコスト増加や価格上昇といった負担が発生する場合があります。
もし、一部の企業だけが環境対策を進め、他社が従来の方法を維持した場合、価格面で不利になる可能性もあります。そのため、「社会全体では協力した方が良い」と分かっていても、自社の利益を優先した結果、行動が進みにくくなるケースがあります。
これは、全体最適と個人最適のズレが生じる「囚人のジレンマ」に近い考え方として説明されることがあります。
③フリマアプリの価格設定競争
フリマアプリでは、出品者が競合商品の価格を見ながら販売価格を設定しています。
たとえば、同じ商品が多数出品されている場合、自分の商品だけ高い価格では売れにくくなる可能性があります。そのため出品者は、他の出品状況や相場を確認しながら価格を調整します。
一方で、過度な値下げが続くと全体の相場が下がり、出品者全体の利益が減少するケースもあります。このように、他者の行動を踏まえて意思決定を行う状況は、ゲーム理論の考え方と関係しています。
ゲーム理論を活用する際の注意点

人は必ずしも合理的な判断をするとは限らない
ゲーム理論では、「人は合理的に行動する」という前提で分析を行うことが一般的です。しかし実際には、感情や経験、思い込みなどによって行動が左右されるケースも少なくありません。
たとえば、損失を避けたい心理や相手への感情によって、合理性だけでは説明できない判断をする場合があります。そのため、理論通りの結果にならない可能性がある点には注意が必要です。
持っている情報によって選択が変わることがある
ゲーム理論では、相手の状況や行動をどこまで把握しているかによって、選択が変わることがあります。現実のビジネスでは、すべての情報を事前に把握できるケースは多くありません。情報量や情報の質に差があると、同じ状況でも異なる判断につながる場合があります。
感情や人間関係の影響も考慮する必要がある
実際の社会では、利益や損得だけでなく、信頼関係や感情も意思決定に影響します。たとえば、長期的な取引関係がある場合は、短期的な利益だけを優先しない判断が行われるケースもあります。ゲーム理論を活用する際は、数字だけでは見えない人間的な要素も考慮することが大切です。
ゲーム理論をマーケティングに活かすならBLAMへ

ゲーム理論は、競合他社や消費者の行動を踏まえながら意思決定を行う考え方として、価格戦略や広告運用、SNS施策など幅広い場面で活用されています。しかし実際には、「どのように戦略へ落とし込めばよいかわからない」「競争環境を踏まえた施策設計が難しい」と感じるケースも少なくありません。
株式会社BLAMは、独自のPjTO(プロジェクトチーム・オプティマイゼーション)という手法をもとに、戦略設計からWeb広告運用、クリエイティブ制作まで幅広く支援しているマーケティング会社です。
また、国内最大級のマーケティング特化型複業マッチングサービス「KAIKOKU(カイコク)」を運営しており、企業の課題やフェーズに応じて最適な専門人材をアサインできる体制を整えています。
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競争環境を踏まえたマーケティング戦略の設計や運用に課題を感じている方は、ぜひご相談ください。
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ゲーム理論の考え方をマーケティングや日常に活かしてみよう

いかがだったでしょうか。
ゲーム理論は、ビジネスをする上では欠かせない行動プロセスのひとつです。
また、日常生活においても、あらゆる社会現象や経済現象の中で自然と適切な行動の選択を取っているはずです。ゲーム理論は難しい理論に感じるかもしれませんが、考え方自体は身近な場面にも活用できます。まずは普段の意思決定の中で、「相手の行動を踏まえて考える」という視点を意識してみてはいかがでしょうか。
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