
執筆者 沖野 耕基(おきの こうき)|船井総合研究所にて300社以上のBtoB企業支援に従事後、アムール株式会社を創業。生成AI活用普及協会(GUGA)シニアパートナー。AI検索最適化(AEO/GEO/LLMO)支援を提供し、北海道を代表する企業100選、SMB Growth AWARD 2025を受賞。MBA取得。
「ChatGPTで調べたら競合は出てきたのに、自社は一切出てこなかった」。この1〜2年でそんな相談が急増しています。BtoBの購買行動にAIが介在し始め、推薦されない会社は商談機会を失いつつあります。本記事では、300社以上のBtoB企業支援を通じて見えてきた「AIに推薦される会社の設計法」を、自社実験と3社の事例をもとにお伝えします。
AI検索で「競合は出るのに自社は出ない」企業が増えている
ここ1〜2年で、クライアントから次のような相談をいただく機会が急増しました。
「ChatGPTやGeminiでは競合企業が紹介されるのに、自社は出てこない」
「AIで比較検討されるようになり、商談につながりにくくなった気がする」
こうした背景には、BtoB企業の購買行動の変化があります。LANYの調査では、BtoBビジネスに携わる会社員・経営者531名のうち55.5%が、比較検討の際に生成AIを活用していると回答しています。また、NTTドコモ モバイル社会研究所の調査でも、生成AIの利用率は2025年から2026年の1年間で27%から51%へと拡大しており、AIが企業選定の入り口になりつつあります。
印象的だったのは、あるコンサルティング会社の事例です。十分な実績と提案力がありながら、Geminiで競合比較をした際には比較候補に入らず、商談機会を逃していました。
原因は実績不足ではなく、「AIが推薦できる形で情報が整理されていなかったこと」でした。AIは自社サイトだけでなく、第三者メディア、比較サイト、口コミ、SNSなど複数の情報を照合しながら推薦先を判断します。そのため、AIが推薦理由として使える情報が不足している企業は、実力があっても推薦されにくくなります。
この経験から私たちは、「実力がある会社」と「AIに推薦される会社」は必ずしも一致しないことを実感しました。
出典:LANY株式会社 調査 https://www.lany.co.jp/lany-llmo-lab/ai-purchasing-behavior
出典:NTTドコモ モバイル社会研究所 調査(2026年2月調査/2026年4月6日公表) https://www.moba-ken.jp/project/lifestyle/20260406.html
自社で900回検証して見えてきた、AIが会社を推薦する条件とは
「クライアントに提案する以上、まずは自分たちで検証しなければ意味がない」。そう考え、自社自身を対象にAI検索の検証を始めました。
ターゲット顧客が実際に入力しそうなプロンプトを100種類設定し、「LLMOコンサルを依頼できる会社を教えてください」「AIマーケティングに強い会社は?」「BtoB企業のAI検索対策を支援している会社を紹介してください」といった質問を、ChatGPT・Gemini・Perplexityに対して合計900回実行しました。
結果は予想以上でした。初回の計測では、自社が言及されたのは900回中わずか2回。自社サイトには実績やサービス内容を十分掲載していたにもかかわらず、ほとんど推薦されなかったのです。
分析を進めるなかで見えてきたのは、AIが推薦するのは「情報量が多い会社」ではなく、「推薦する理由を説明できる会社」だということでした。第三者メディアでの掲載実績や比較記事、取材記事など、外部から確認できる情報があることで初めて、AIは「この会社がおすすめです。なぜなら〜という実績や評価があるからです」と根拠を示して回答できます。
この仮説をもとに情報設計を見直した結果、現在ではAI経由の問い合わせから毎月1〜2件の案件化が継続的に生まれています(自社実績、2025〜2026年)。
支援先3社で検証した、AIに推薦されるための改善事例
自社での検証結果をもとに、支援先企業でも同様の設計を実施しました。ここでは、その中から代表的な3つの事例をご紹介します。
事例① カウンセリングルーム(東京・六本木)
課題は、「地域×カテゴリ」の検索でAIに言及されないことでした。「六本木 カウンセリングルーム おすすめ」と質問すると、競合は推薦される一方で、自社は候補に挙がりませんでした。
そこで、AIが推薦理由を説明できる情報設計に取り組みました。エリアや対応できる悩み、相談内容を構造化したコンテンツを整備するとともに、第三者メディアへの掲載や口コミ設計を実施。「六本木・乃木坂エリアで○○の悩みに対応できるカウンセリングルーム」という文脈を明確にしました。
結果として、AI・Google経由の問い合わせは月2〜3件から月6〜8件へと増加しました(自社支援実績、2025年)。
事例② Webサイト制作会社(BtoB)
この会社の強みは「ブランディングに特化したWeb制作」でした。しかし、「Webサイト制作会社 おすすめ」とAIに質問すると、大手や総合型の制作会社が並び、自社は比較候補に入っていませんでした。
そこで、「ブランディングに強い制作会社」というポジションを明確に定義し、その強みが伝わる専門コンテンツや比較サイトへの掲載を進めました。AIが「ブランディングを重視するならこの会社」と推薦できる根拠を外部にも蓄積したのです。
結果として、AI検索経由の問い合わせは月0〜1件から月4件へ増加し、AI検索経由のアクセスも約3倍になりました(自社支援実績、2025年)。
事例③ SaaS企業(チャットボット)
「チャットボット 比較」「チャットボット おすすめ SaaS」といったプロンプトでは、競合製品は紹介される一方で、自社は比較候補に含まれていませんでした。そのため、AI検索を起点とした商談機会そのものが生まれていない状況でした。
施策では、比較検討で評価される情報設計と導入事例の整理を実施しました。「どのような企業の、どのような課題を解決できるのか」をAIが推薦理由として活用できる形に整理したことがポイントです。
結果として、AI検索を起点とした商談は月0件から最大4件まで増加しました(自社支援実績、2025年)。
AIに推薦されるのは「記事数」ではなく「言及の設計」だった
複数の支援を通じて確信したのは、「コンテンツを増やすこと」と「AIに推薦されること」は必ずしも一致しないということです。
- 効果が見られなかった施策
- 自社ブログを週3本投稿する
- SEOを意識したキーワード記事を大量に公開する
- 自社サイトのサービス説明やスペック情報を詳しく書き直す
- 成果につながった施策
- 第三者メディアや比較サイトへの掲載(Earned/Paid Media)
- 口コミ・レビューを獲得する仕組みづくり(Shared Media)
- AIが推薦理由として活用しやすい文脈で情報を整理する(Owned Media)
AIは、自社サイトだけを見て企業を推薦しているわけではありません。第三者メディアや比較サイト、口コミ、SNSなど複数の情報源を照合しながら判断しています。そのため、PESO(Paid/Earned/Shared/Owned)の視点で、「第三者が言及しやすい事実」を設計することが重要になります。
さらに気づいたのは、AIは「良い情報だけを並べた会社」を推薦するわけではないということです。外部で言及されている内容と自社の発信内容に整合性がなければ、AIは根拠として採用しません。AIに推薦されるためには、誇張ではなく、複数の情報源で裏付けられる事実を積み重ねることが前提になります。
AIが説明できる会社を設計することが、推薦される第一歩
これまでの検証や支援を通じて、私たちがたどり着いた結論はシンプルです。
「AIに推薦される会社とは、記事を大量に公開した会社ではなく、AIが推薦理由として説明できる事実を設計した会社である」
AIが企業を推薦するプロセスは、大きく3つの要素で整理できます。
- CEP(カテゴリーエントリーポイント):どのような状況や課題の中で、自社が想起されるかを設計する
- KBF(購買決定要因):AIが比較検討の軸として使うポイントで、自社の強みを明確にする
- Proof(根拠):第三者情報によって、自社の強みや実績が裏付けられている状態をつくる
この3つが揃ったとき、AIは初めて「○○を探しているなら、この会社がおすすめです。なぜなら、△△という実績や評価があるからです」と推薦理由を含めた回答を生成できます。
一方で、CEPやKBFを整理しても、Proofとなる根拠が不足していればAIから推薦されることはありません。AIは単に魅力的な情報を並べるのではなく、複数の情報源から確認できる根拠をもとに推薦先を判断するからです。
AIに推薦される会社をつくる5つの実践ステップ
現在、私たちが支援先企業に提案しているAI検索対策の進め方は、以下の5ステップです。
Step 1|AI診断で現在地を把握する(今日から無料で実施可能)
まず確認すべきは、「現在AIから自社がどのように認識されているか」です。ターゲット顧客が実際に検索しそうなプロンプトを10種類程度設定し、ChatGPT・Gemini・Perplexityで自社が言及されるかを確認します。「○○業界でおすすめの会社は?」「○○の課題を解決できる会社を教えて」など、購買検討につながる質問を中心に検証することが重要です。
Step 2|CEP・KBFを設計する
次に、「どのような場面で自社を思い出してもらうか(CEP)」「何を比較軸として選ばれるか(KBF)」を明確にします。ポイントは、競合との差別化ポイントを1〜2つに絞ることです。「○○領域に強い会社」と一言で表現できる状態を目指します。
Step 3|PESO施策で第三者言及を増やす
自社サイトの情報整備(Owned)だけではなく、メディア掲載・受賞実績(Earned)、SNS・口コミ・レビュー(Shared)、比較サイト掲載(Paid)を組み合わせ、AIが参照できる第三者情報を増やしていきます。
Step 4|AI回答を継続的にモニタリングする
月1回、Step1で設定したプロンプトを再度実行し、言及率や推薦内容の変化を確認します。単に名前が出るかだけではなく、「AIがどの情報を根拠として推薦しているか」を分析することが重要です。
Step 5|Proofを継続的に積み上げる
最後は、AIが推薦理由として活用できる外部情報を継続的につくることです。受賞歴、メディア掲載、導入事例など、第三者から確認できる事実を積み重ねていきます。
「ここから先は運用が重要」という境界線
Step1〜2の「診断」と「ポジション設計」は、自社でも取り組むことが可能です。一方で、Step3以降の「どの媒体で、どのような言及を設計するか」「AIが理解しやすい形で情報を整理するか」という実装・継続フェーズでは、専門的な設計力と継続的な運用工数が必要になります。まずは、自社がAI上でどのように認識されているのかを確認することから始めることをおすすめします。現状把握こそが、AIに推薦される会社づくりの第一歩です。
まとめ|AIに推薦される会社は「情報量」ではなく「推薦理由」を設計している
AI検索が普及する現在、「検索結果で上位表示されること」と同じくらい重要になっているのが、「AIの推薦候補に入ること」です。そのために必要なのは、単純にコンテンツ量を増やすことではありません。AIが推薦理由として活用できる、第三者から裏付けられた事実を設計することです。CEP・KBF・Proofの3要素を整理し、PESO(Paid/Earned/Shared/Owned)の視点で情報環境を整える。これが、現時点で私たちが考えるAIに推薦される会社づくりの基本設計です。
まず今日からできることは、自社名と10種類程度の購買検討プロンプトをAIに入力してみることです。「現在、自社がAIからどのように認識されているか」を知ることが、AI検索時代に選ばれる会社づくりの第一歩になります。

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