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急成長SaaS企業が実践!営業とマーケティングの壁を壊す『RevOps』の実装方法

はじめに:なぜ今、『RevOps』が必要なのか
「マーケティングが獲得したリードの7割がセールスでフォローされていない」
「セールスから『質の低いリードばかり送られてくる』とクレームが絶えない」
「同じ顧客データをセールスとマーケティングとカスタマーサクセスで別々に管理している」
あなたの会社でも、このような光景はありませんか?
これらは、多くのBtoB企業で日常的に起きている問題です。特に急成長を目指すSaaS企業では、組織の拡大に伴い部門間の分断が深刻化し、本来なら獲得できたはずの売上機会を逃しているケースが少なくありません。
私がこれまで携わってきた企業の中で、これらの問題を根本的に解決し、YoY150%の売上成長率を数年続けた企業があります。その鍵となったのが「RevOps(Revenue Operations)」という考え方でした。
本記事では、『RevOps』を実装することで、セールスとマーケティングとカスタマーサクセスの壁を取り払い、持続的な成長を実現する具体的な方法をお伝えします。
RevOpsとは何か:「部門最適のワナ」から抜け出す方法
RevOpsとは、マーケティング、セールス、カスタマーサクセスといった、これまで個別に活動しがちだった部門を統合的に管理し、会社全体の収益を最大化するための組織戦略です。
従来型の組織では、各部門がそれぞれの目標(KPI)を追いかけています。
例えば、
- マーケティング部門:リード(見込み客)の獲得数を最大化する
- セールス部門:受注率と受注金額を最大化する
- カスタマーサクセス部門:解約率を最小化する
一見すると合理的に見えるこの体制が、実は組織全体の成長を阻む「部門最適のワナ」なのです。
ある急成長SaaS企業の例を見てみましょう。
この企業では、マーケティング部門が月間1,000件のリードを獲得していましたが、セールスの商談化率はわずか5%。原因を調査したところ、マーケティングがKPIであるリード数を達成するため、ターゲット外の企業からも大量にリードを獲得していたことが判明しました。
一方、セールス部門は「質の低いリード」として、マーケティングからのリードを軽視し、自らアウトバウンドで新規開拓を行っていました。結果として、マーケティングの投資ROIは悪化し、セールスの生産性も低下するという悪循環に陥っていたのです。
実際、急成長しているSaaS企業では、こうした事態が頻繁に発生しています。
では、どのようなタイミングでRevOps導入を検討すべきでしょうか。
RevOps導入を検討すべきタイミング
私の経験上、以下のような兆候が見られたら、RevOps導入を真剣に検討すべきタイミングです。
1. 組織規模による判断基準
多くの企業では、従業員数が50名を超えたあたりから部門間の分断が始まります。
私の経験上、特に以下の条件に当てはまる場合、組織間で目標の乖離が生じ始めることが多く、まさにRevOpsを導入すべきタイミングと言えるでしょう。
- セールスチームが10名以上いる
- マーケティングチームが3名以上いる
- カスタマーサクセスチームが存在する
- 月間の新規商談数が50件を超えている
2. 定量指標による判断基準
また、私の経験上、以下の指標のうち3つ以上に当てはまるようでしたら、マーケティング/セールス間の連携不足により生産性が下がっており、RevOpsの導入を検討すべきタイミングと言えるでしょう。
リード管理の課題
- マーケティングが創出したリード(MQL)の30%以上がセールスのフォロー対象外となっている
- リード発生から初回コンタクトまで平均3日以上かかっている
- 月間リード数が500件を超え、手動管理が限界になっている
データ管理の課題
- 同じ顧客情報が3つ以上のシステム(SFA, MAツールなど)に分散している
- データの不整合により月5件以上の機会損失が発生している
- レポート作成に週8時間以上を費やしている
セールス効率の課題
- セールスの活動時間のうち、実際の顧客対応が30%未満になっている
組織のハレーションやオペレーションの複雑化を懸念し、RevOps導入を躊躇する企業も多いですが、導入しないことによる機会損失も考慮すべきです。
RevOpsが解決する、組織の根深い3つの課題
RevOpsは、具体的にどのような課題を解決するのでしょうか?
1. 顧客データの分断
多くの企業では、マーケティングはMAツール、セールスはSFA/CRM、カスタマーサクセスは独自のツールと、部門ごとに異なるシステムでデータを管理しています。
ある企業では、同じ顧客の情報が3つのシステムに分散し、それぞれ異なる内容が記録されていました。このデータの不整合により、適切なアプローチができず、顧客体験を損なう結果となっていました。
2. プロセスの分断
リードがマーケティングからセールスに引き渡される際の定義が曖昧で、タイミングも最適化されていないケースが多く見られます。
ある企業では、マーケティングは「資料ダウンロード」のみのリードをそのままセールスへ。しかしセールスは「まだ確度が低い」とフォローを後回しに。この連携不足の隙を突かれて競合にアプローチされ、機会損失につながる、という悪循環が頻発していました。
3. 目標の不一致
部門ごとのKPIが、会社全体の収益目標と連動していないケースが多く見られます。
ある企業では、マーケティングがリード獲得数、セールスが新規受注数、カスタマーサクセスが解約率をKPIとしていました。しかし、会社として最も重要な指標であるARRは、どの部門も直接的な責任を持っていませんでした。
上記のような課題は、多くの企業が課題として認識しています。
RevOps実装の5つのステップ
ここからはRevOpsを実装するためのステップを解説していきます。
ステップ1:全部門で同じゴールを目指す - 統合KPIの設定
最初に行うべきは、部門を横断した共通の目標(統合KPI)を設定することです。
例えば、下記のような指標を置くことが一般的です。
主要KPI
- パイプライン創出額:マーケティングとセールスが共同で責任を持つ
- Net ARR:セールスとカスタマーサクセスが共同で責任を持つ
サブKPI
- MQL→アポイント転換率
- アポイント→商談化率
- 平均商談期間
- 受注率
- Net Revenue Retention(売上継続率)
まずは、これらのKPIを部門横断で共有し、週次でレビューする体制を構築しましょう。
ここで最も大切なのは、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスの各部門が、組織全体の共通目標を深く理解し、それに向かって連携するという意識を持つことです。
この実現のため、経営層や部門長が責任者となり、組織全体の目標達成のために最適なKPIを設計し、その意図を全メンバーに丁寧に説明することが成功の鍵です。
もし、これを現場レベルでの調整に委ねてしまうと、部門間の力関係といった本来意図しない要因が働き、あるべきKPI設定が歪められてしまう事態を招きかねません。
ステップ2:リードの「質」を定義する - 引き継ぎプロセスの明確化
次に、マーケティングからセールスへリードを引き渡す際のルールを明確に定義します。
MQL(マーケティング有効リード)の定義
- 企業規模:従業員50名以上
- 業界:IT、製造業、金融業
- 行動スコア:過去30日間でWebサイトに3回以上訪問している
- BANT情報:予算または導入時期が明確になっている
SQL(セールス有効リード)への転換基準
- インサイドセールスによるヒアリングが完了している
- 顧客のニーズが明確になっている
- 決裁者または意思決定プロセスが確認できている
このプロセスを導入した結果、リードの質が劇的に向上し、またリードの取り次ぎがスムーズになったことで、MQLからSQLへの転換率が25%から50%に向上した事例もあります。
ステップ3:情報を一元管理する - データ基盤の統合
各部門に散らばった顧客データを一つにまとめ、いつでも誰でも同じ情報を参照できる状態を作ります。
例えば下記のようなアクションを検討してみましょう。
- SFA/CRMツールを中心にデータを統合
- MAツール、カスタマーサクセスツールと連携
- 部門横断でKPI進捗がわかる共通のダッシュボードを作成
まずは、共通のダッシュボードを一つ作ることから始めるのがおすすめです。
ステップ4:推進体制を整える - 組織とガバナンスの構築
RevOpsは片手間で成功するものではありません。専門チームを組成し、推進体制を整えましょう。
セールス/マーケティング/カスタマーサクセス部門を統括している経営層が責任者になることが、組織体制とガバナンスの構築をスムーズにします。
特命チームの構成例
- RevOps責任者1名(経営層)
- データ分析担当 1名
- システム管理者 1名
- プロセス改善担当 1名
- 各部門(マーケ/セールス/CS)のマネージャー
定例会議の設計
- 月次: パイプラインレビュー会議
- 四半期: RevOps戦略会議
データに基づいた客観的な意思決定を徹底するルールを設けましょう。
ステップ5:改善し続ける - PDCAサイクルの確立
一度作って終わり、では意味がありません。継続的に改善する仕組みを構築します。
例えば、PDCAサイクルを以下のように回すことができます。
Plan(計画):四半期ごと
- 前四半期の振り返り
- ボトルネックの特定
- 改善施策の立案
Do(実行):月次
- 施策の段階的展開
- 小規模チームでのテスト
- 全社展開
Check(評価):週次
- KPIモニタリング
- 異常値の早期発見
- 顧客からのフィードバックの収集
Action(改善):随時
- プロセスの修正
- ツールの設定変更
- 現場トレーニングの実施
RevOps導入で「ありがちな失敗」と、その回避策
最後に、RevOps導入で陥りがちな失敗パターンと、それを避けるためのポイントをご紹介します。
失敗パターン1:トップダウンでの強引な導入
経営層の号令だけで進めようとすると、現場から「やらされ感」が生まれ、反発を招きます。
【回避策】 小さなチームで成功体験を作り、そのメリットを社内に共有しながら段階的に進めましょう。
失敗パターン2:ツール導入が目的化
「とりあえず高機能なツールを入れれば何とかなる」と考え、結局使いこなせずに終わるパターンです。
【回避策】 まず自社の業務プロセスを設計し、それに最適なツールを選ぶ、という順番が鉄則です。
失敗パターン3:データ品質の軽視
不正確なデータに基づいて意思決定をしてしまい、誤った方向に進んでしまいます。
【回避策】 データ入力のルールを標準化し、定期的に品質をチェックする手間を惜しまないでください。
最後に、RevOps導入を成功させるための心得をご紹介します。
まとめ:RevOpsを成功に導く3つの心得
導入を成功させるために、以下の3つの心得を意識してください。
- 段階的アプローチを徹底する
RevOpsは組織文化の変革を伴う大きな取り組みです。一気に変えようとせず、小さな成功を積み重ねながら進めることが重要です。 - 人とプロセスを優先する
ツールやテクノロジーは手段に過ぎません。まず人の意識を変え、プロセスを最適化してから、それを支援するツールを導入しましょう。 - 経営層のコミットメントを確保する
RevOpsは部門横断的な取り組みのため、経営層の強力な支援が不可欠です。ROIを明確に示し、継続的な投資を確保しましょう。
セールスとマーケティングとカスタマーサクセスの壁を壊すことは、決して簡単ではありません。
しかし、『RevOps』を実装することで、組織全体が一つの目標に向かって協力し合い、持続的な成長を実現することが可能になります。
まずは自社の現状を客観的に分析し、小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。
その一歩が、組織を大きく変革する第一歩となるはずです。

いかがだったでしょうか?
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