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AIでメール原稿作成を1/12に短縮するも、潜むのは「部分最適」の罠

#toB
#メールマーケティング

2026.08.31

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AIでメール原稿作成を1/12に短縮するも、潜むのは「部分最適」の罠
スクリーンショット 2026-08-31 19.17.27.png

はじめまして。私は、オウンドメディア運営を行うベンチャー企業でWebディレクター(SEO中心)を2年経験し、現在はBtoBマーケターとして3年になります。

現在扱っているのは、研修やテスト、調査レポートといった専門性の高いBtoB商材です。約1万名の配信リストを抱え、セミナー運営やSEO、メール配信などを通じて、認知拡大からリード獲得、そして営業へのトスアップまでの一連の流れを構築しています。その中でも、特に大きな比重を占めていたのがメールマガジンの配信でした。

背景:メール配信の「作業」に追われていた

配信は月に2〜3回。1回の配信ごとに原稿を1本用意します。正直に言うと、この原稿作成はかなり重たい作業でした。専門性の高い商材なので、内容を噛み砕きつつ、読み手に「サンプルを見てみたい」と思わせる文面にする必要がある。骨組みの設計から誤字脱字の確認まで含めると1本仕上げるのに2時間くらいかかっていました。

そしてもうひとつ、ずっと引っかかっていたことがあります。配信のたびに5〜10件ほどのサンプル希望が入り、それをそのまま営業にトスアップしていたのですが、3ヶ月で数十件渡して、成約は1件あるかどうか。営業からすれば、確度のわからないリストを大量に渡されて、追っても追っても決まらない状態です。いくらリードを作っても、受注に繋がらなければ工数だけがかかってしまいます。

私は当初、この問題を「メールの文面がイマイチだからだ」と捉えていました。件名をもっと工夫すれば、本文をもっと磨けば質の高いリードが取れるはず。だからAIに期待したのも、最初は純粋に「クオリティの高い原稿を効率的に作成するため」でした。

試したこと:最初は単なる「文面作成の効率化」のつもりだった

きっかけは、社内でMicrosoft Copilotが使えるようになったことです。ちょうど全社的にAI活用を進める動きがあり、私もまずは一番時間を食っていたメール原稿の作成に使ってみることにしました。

使い方は、いたってシンプル。最初に自分で作った書きかけの本文を貼り付けて誤字脱字の確認をしてもらったり、改善ポイントを挙げさせたり、件名の案を10個出してもらって選んだり。この時点でも多少は楽になったのですが、劇的に変わったのは使い方を変えてからでした。

過去の配信原稿を数本と、商材の詳細資料をまとめて読み込ませてから書かせる。これだけです。過去原稿がトーンや構成のお手本になり、商材資料が中身の正確さを担保してくれるので、出てくる初稿の精度が全然違う。0から作成する必要がないので、1本2時間かかっていた原稿作成が、5〜10分で終わるようになりました。表現も過去原稿をもとにしていてトンマナが合っているので、必要なのは微調整のみ。参考になる過去原稿がなくても一本だけ作ってしまえばあとは量産可能です。私の場合は月に2〜3本書いていたので、単純計算で月4〜6時間前後が浮くようになりました。

ここまでなら、よくある「AIで時短できました」という話です。転機は、その浮いた時間で始めた壁打ちでした。

直接のきっかけは、Copilotからの一言です。文面を改善するやり取りの中で、「よりターゲットに刺すなら、こういう専門的な表現が有効です」という提案が返ってきました。たしかに刺さりそうだ、と思う一方で、引っかかりもありました。専門用語を使えば使うほど、その業界の外の人には届かなくなる。今のようにリスト全体へ一斉配信している状態で専門用語に振り切ったら、本来のターゲット以外を全部切り捨てることになります。

気づいたこと:数字より先に、「1件の意味」が変わった

配信対象を絞る、という当たり前ができていなかった

そこで、配信を2つに分けることにしました。①本来のターゲット業種には、専門用語を使ってより深く刺さる文面を。②その周辺にいる層(ターゲット業種を顧客に持つコンサルタントなど)には、専門用語を使わない文面を。「1本の正解の文面」を探すのをやめて、相手によって出し分ける設計に変えたわけです。振り返れば当たり前のことなのですが、「文面の改善」ばかり見ていた頃には出てこなかった発想でした。今までだったら、2パターンの原稿を作成して出し分けをすれば、工数も2倍。これもAIがあるからこそ、効率的に進められたという側面もあります。

正直に書いておくと、これで数字が劇的に伸びたわけではありません。CVRが跳ね上がったとか、サンプル希望が倍増したとか、そういう派手な結果はなかった。ただ、明らかに変わったことがひとつあります。入ってくるサンプル希望の「中身」です。

以前のサンプル希望には、担当者の個人的な興味で、会社としての導入意向はまったくないケースや、連絡が取れないケースがかなり混ざっていました。営業に渡しても追いようがないリードです。出し分けを始めてからは、そういうノイズが目に見えて減りました。件数は同じ1件でも、その1件の意味がまったく違う。量を追う指標では見えない変化が、確かに起きていました。

「すぐ営業に渡す」をやめた

もうひとつ、思い切って変えたのがトスアップのタイミングです。

以前は、サンプル希望が入ったら即座に営業へ渡していました。マーケとしては「リードを渡すこと」がゴールになっていて、その先の成約率にはあまり目を向けていなかった。でも冒頭に書いたとおり、数十件渡して成約1件あるかどうか。この数字を直視すると、「早く渡すこと」は誰も幸せにしていませんでした。営業は連絡のつかない相手や導入意向のない相手を追い続けて疲弊するし、興味の薄い相手にとって営業からの電話はただの迷惑です。

そこで、マーケ側でひと呼吸置く設計に変えました。まず個人情報の入力なしでカタログをダウンロードできるようにして、間口は広く保つ。その上で、その後も継続的に興味を示してくれた相手にだけ個別にアプローチし、見込みの温度を確かめてから営業に渡す、という流れです。

結果、トスアップの件数は減りました。一見、「マーケの作るリード数が減った」というように見えるかもしれません。でも実際は、本当に確度の高い企業が浮き彫りになる、という変化がありました。営業は少ない件数を1社1社丁寧に追える。ちなみにこの個別アプローチのメール文面も、1通ずつ手で書いていたら到底回らないので、Copilotに下書きさせています。ナーチャリングの工数問題は、AIがいるから成立している設計とも言えます。

学び:AIは「答えをくれる道具」ではなく「問いを返してくる相手」だった

この一連の経験で、AIに対する見方がはっきり変わりました。

導入前の私は、AIを「作業を速くしてくれる道具」だと思っていました。実際、その期待は裏切られていません。月の原稿作成にかかる時間は約6時間から約30分になりました。ただ、振り返ってみると、本当に価値があったのは時短そのものではなく、時短の先で始めた壁打ちのほうでした。

Copilotとペルソナを詰めるやり取りの中で突きつけられたのは、考えてみればごく基本的な問いです。でも日々の業務の中で、自分の施策の前提を一つひとつ問い直してくれる相手は、現実にはなかなかいません。AIの壁打ちはそれをいつでも、何往復でも、遠慮なく自分が満足するまで付き合ってくれるのが強みだと思います。

もうひとつの学びは、AIの提案をそのまま採用するのではなく、見直すきっかけにしたところに一番の価値があったということです。「専門的な表現が刺さる」という提案を鵜呑みにして全配信を専門用語に振り切るのではなく、提案を受けて「では誰に何を出し分けるか」を考えるきっかけにしました。AIが設計してくれたのではなく、AIの提案が、自分に設計を考えさせた。この順番が大事だった気がしています。

メールの文面という「施策の一部分」を磨くつもりで始めたAI活用が、配信対象の再定義、トスアップの設計変更と、気づけば施策全体の見直しにつながっていた。AIが教えてくれたのは正解ではなく、自分の設計の甘さでした。

今のやり方と、これから

現在は、ここまでに書いた設計——業種によるセグメント別の出し分け配信や、初動で興味を持っている方だけを対象にしたナーチャリングメールの配信、温度感を確かめてからのトスアップ——を継続して運用しています。原稿作成もナーチャリングの個別メールも、Copilotの下書きが前提の業務フローになっているため、個別のケースにも工数をかけずに対応できます。

そして今、少しずつ始めているのが営業担当者との連携です。トスアップの件数が絞られたことで、1社1社について「この企業はどんな背景でサンプルを見たのか」「どう攻めるか」を営業と話せるようになりました。以前の、数十件をまとめて渡していた頃には物理的に不可能だったコミュニケーションです。マーケと営業が同じ目線で企業を見て話す時間を増やすことが、次の打ち手だと考えています。

メールの件名に悩んでAIを開いたことが、巡り巡って営業との連携につながる。始めた頃には想像もしていなかった変化ですが、AI活用の面白さは案外こういうところにあるのかもしれません。AIはあくまで手段のひとつですが、このような活用方法もあると知っていただけたら幸いです。

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