
BtoB企業におけるセミナー施策は、マーケティングにおける基本施策になってきています。しかし、そこから商談が生まれているケースは意外と少ないのではないでしょうか? 中には「セミナーは商談を生むものではない」と割り切ってしまっている企業もあるように思います。
セミナーの成果は、話者の上手さ以上に、ターゲットと企画のマッチによって決まります。そしてその企画は、「テーマとターゲットの親和性」と「検討度合い」という2つの軸によって成立しています。
本記事では、TOFU・MOFU・BOFUというファネルを紹介しながら、ターゲットとファネルの要素を組み合わせたセミナー企画の作り方を解説します。このファネルに沿って顧客を誘導していくことで、単発の当たり外れではなく、セミナー施策全体で確実に商談を作れるようになります。
集客セミナーと商談セミナーは分けて、どちらもやる
セミナーには本来、「認知を広げるための回」と「検討を進めるための回」という異なる役割があります。集客するためのセミナーと、商談を生み出すためのセミナーは分けて設計し、どちらもやるのが正解です。ところが実際には、1本のセミナーで認知獲得と商談創出の両方を狙ってしまいがちです。
両方を狙うと、テーマは自然と広く浅くなります。広いテーマに集まるのは情報収集段階の参加者が中心で、彼らはまだ製品比較や導入検討のフェーズにいません。その人たちに向けて終盤でサービス紹介をしても、刺さらないのは当然です。
やっかいなのは、この失敗が「満足度の高さ」に隠れてしまうことです。参加者にとっては有益な勉強会として完結しているので、アンケートの評価は高く出ます。しかし勉強会として完結しているということは、次の行動につながる導線がないということでもあります。
ファネルで考えるセミナーの3類型【概念編】
この2つを分けて設計するための枠組みが、マーケティングファネルです。このファネルは検討度合いを表しています。そして、検討度合いに合わせて、各段階で「テーマとターゲットの親和性」を意識して、セミナー企画をしていくのです。ファネルは一般に、認知段階のTOFU(Top of Funnel)、興味関心段階のMOFU(Middle of Funnel)、比較検討段階のBOFU(Bottom of Funnel)の3層で捉えられます。(それぞれ、トフ・モフ・ボフと読みます)セミナーもこの3層に対応させて、役割を分けて設計します。
TOFU──トレンドワードで課題認識とカテゴリーを喚起する。 対象は、まだ自社を知らないがトレンドは追っている層です。ここでのセミナーは、業界のトレンドワードを入り口に「こういう課題領域・解決カテゴリーもある」と、自社サービスが属するカテゴリーを認識してもらう場です。ゴールはリード獲得であり、商談は求めません。
MOFU──自社の能力を伝える。 課題を認識した層に対して、事例やノウハウといった自社のナレッジを提供し、課題に紐づく解決策の選択肢を広げる場です。
BOFU──デモ・サービス説明で商談へ進める。 検討が進んだ層に対して、デモやサービス説明を行い、商談を打診する場です。少人数での開催を想定しています。
段階ごとに参加者の心理状態と欲しい情報はまったく違います。ですから1本にまとめると、誰にも最適化されないセミナーになるのです。
ファネル別セミナーの作り方【実務編】
概念は理解しやすいのですが、実際に作るとなると各階層で難しいポイントが出てきます。ここからは企画設計におけるポイントを紹介します。
TOFUの作り方──トレンドワードの選び方と「商談を求めない」割り切り
TOFUの成否はテーマ選定でほぼ決まります。ポイントは、自社が話したいことではなく、ターゲットが今追いかけている言葉から入ることです。具体的には次の3つで選びます。
- 時事性があるか。
業界の最新トレンドや規制変更など、「今このタイミングだから聞きたい」と思わせる言葉を軸にします。 - ターゲットの階層に合っているか。
同じトレンドワードでも、経営層向けなら戦略の切り口、実務者向けなら具体的な手法の切り口に調整します。 - 自社カテゴリーに接続できるか。
トレンドワード単体で終わらせず、「トレンド×自社の解決カテゴリー」の掛け算でタイトルを作ります。
そして重要なのが割り切りです。TOFUで商談を求めてはいけません。サービス紹介を入れたくなるのを我慢し、リード獲得とハウスリスト化に徹します。
MOFUの作り方──一番大変なのはここ
3階層の中で、制作の難易度が最も高いのはMOFUです。理由はシンプルで、伝えるべき「自社のナレッジ」が手元にないからです。実際、BtoBでは事例や比較材料といったMOFU向けコンテンツが最も不足しやすく、ここの充実度が商談化率を左右します。
ただし正確に言えば、ナレッジは「ない」のではなく「言語化されていない」だけです。ナレッジは現場に眠っています。ですからMOFUを作るときは、コンテンツ制作の前に、営業担当とデリバリー担当へのヒアリングでナレッジを洗い出す工程を挟みます。聞くべきことは次のようなものです。
- 商談で顧客からよく聞かれる質問は何か
- 導入プロジェクトで顧客がつまずくポイントはどこか
- 成果が出た案件に共通するパターンは何か
この回答は、そのままMOFUセミナーの目次になります。この洗い出しをやるかどうかで、MOFU制作の難易度は大きく変わります。
BOFUの作り方──少人数・デモ中心でよい
BOFUは凝る必要がありません。デモとサービス説明、質疑応答が中心で、参加者は数名でも成立します。ここまで来ている参加者が知りたいのは一般論ではなく「自社に導入したらどうなるか」なので、個別相談に近い形式のほうがむしろ機能します。
3つを「つなげる」──各階層は次の階層の申込を取る場
そして、階層を分けただけでは不十分です。各セミナーが単発で完結してしまうと、ファネルとして機能しません。徹底すべきは「TOFUはMOFUの申込を取り、MOFUはBOFUの申込を取る」という接続です。
具体的な手段は難しくありません。セミナー終了時のアンケートに「次回セミナーに申し込む」というチェックボックスを設けるか、申込URLへ誘導する。アンケートツールにその機能がなければ、お礼メールに次回セミナーの案内を入れる。これだけです。手段は簡単ですが、これを全セミナーで例外なく徹底できている企業は多くありません。
支援事例:設計を分けて接続したら何が変わったか
筆者が支援したIT系サービス企業は、セミナーの申込が100件を超えるのに商談が生まれない状態が続いていました。そこで、月1回開催していた総合セミナーをやめ、トレンドワードを扱うTOFUセミナーと、事例中心のMOFUセミナー、少人数デモのBOFUセミナーに分割しました。あわせて、各回のアンケートとお礼メールに次の階層への申込導線を設置しました。
結果、1回あたりの申込数は以前より減りましたが、TOFU参加者の一部がMOFUに流れ、MOFU参加の時点から個別相談の申込が発生するようになり、BOFU参加者の約3割が商談に進むようになりました。最終的には、セミナー経由の商談が毎月コンスタントに生まれる状態になりました。申込数だけを見れば縮小ですが、商談化という本来の目的では明確に改善しました。
まとめ:評価指標を「申込数」から「次の階層への送客数」へ
このように、セミナーはファネルで設計し、各セミナーの成否は「何件集めたか」ではなく「次の階層に何人送れたか」で評価すべきです。最後に、セミナーをファネル設計したあとのチェックポイントを紹介します。
- そのセミナーはTOFU・MOFU・BOFUのどれか、一言で答えられる
- 参加者を次の階層に送る導線(アンケート・URL・お礼メール)がある
- 評価指標に「次の階層への送客数」が入っている
答えに詰まった項目があれば、そこがファネル設計をやりきれていない箇所ですので、改善してみましょう。ファネル設計は、スケジュール調整にも企画にも気を配らなければならない根気のいる施策ですが、続ければ商談という成果になって返ってきてくれます。

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この記事を書いた人
石坂 拓也
BtoBマーケティングスペシャリスト
Webマーケティング会社・大手Web広告代理店・スタートアップSaas企業などを経験し、マーケティング責任者や事業責任者として活躍。 その後、フリーランスのマーケターとして独立。現在は、主にBtoBマーケティングの戦略設計から実行支援までを行う。




